フランク・ハーバート
SF小説ベストの日本版リストとアメリカ版を見比べると、中身がけっこう違っている。アメリカの方は、指輪物語(SFじゃない・・)とかスターウォーズが上位に入っていて、読者層が日本に比べて裾野が広いかわりに大衆的な感じがする。
後は、前から思っているけど、欧米では幅広く読まれているフランク・ハーバートの「デューン・砂の惑星」が、日本では絶版になっていてあまり知られていないのは残念だ。デイヴィッド・リンチの映画の原作となった4巻まではとても良く、特に砂漠の惑星アラキスを人の住める緑の惑星に変えようというテラフォーミングの理論は、ベトナム戦争後、米軍の使用した枯れ葉剤とベトナムの生態系の蘇生に関する記事を書いていた作者の経験や豊富な知識に裏打ちされていて読みごたえがある。
ウィキペディアによると、
ジェラルド・ジョナスはニューヨーク・タイムズの書評の中で次のように述べた:「ハーバート氏は人類と動物と地理と気候の相互作用を描き、デューンは新たなサブジャンルであるエコロジーSFのスタンダードとなった」。
フランク・ハーバート作品は、デューンだけではなく、デビュー作の「21世紀潜水艦」、パンスぺルミア説を基に宇宙移民を書いた「ボイド 星の方舟」、ジャンプドアシリーズと呼ばれる「鞭打たれる星」と「ドサディ実験星」とどれも良質なサイエンスフィクションだ。
デューンに出てくる生命の妙薬・スパイスが実はLSDのことだったり、エコロジーとシステムズシンキングのアイデアを大衆化させたり、背景に60-70年代アメリカの精神史が潜んでいるのも魅力のひとつだと思う。
映画の方のデューンもなかなか良かったが、最初に映画化をすすめていたのはホドロフスキーで、結局資金繰りがうまく行かずに降板した。ホドロフスキー版作られなかったデューンは、今も語りぐさになっている。
どうなる予定だったかと言うと、
音楽 - ピンク・フロイド、
レディ・ジェシカ - シャーロット・ランプリング
ポール・アトレイデ - ホドロフスキーの息子 ブロンティス
特殊効果 - ダン・オバロン
皇帝 - ダリ
計画が頓挫したのは、ダリが時給10万ドルという法外な出演料を要求してきたからだそうだ。
ホドロフスキーはパリに住んでいて、月に何度かカフェでタロット占いをしたり、年に数回、ニューエイジの本屋で講演をしている。スペイン語なまりのフランス語でしゃべるのでほとんど何を言っているのかは不明だが、なんだかすごく落ち着いた高貴なオーラを出している人だった。
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