フランス 悪魔の住む家

去年の3月にグループでパリからあまり遠くない田舎へ週末旅行をする計画が出た。
3.11震災の直後だったので気が進まなかったけど、頭合わせのためにどうしてもと言われて仕方なく承諾した。行き先や宿泊についてみんなが相談していたメールにもほとんど目を通さず、日本のニュースばかり見ていたので、出発時にも「行き先がブルゴーニュ地方のどこか」ということだけしか分かっていなかった。

借りた家は、ワインで有名なニュイ=サン=ジョルジュから遠くない村はずれの森に囲まれた深い谷間に一軒だけぽつんと立つ古い農家。敷地には母屋と納屋とほとんど跡形もない廃墟の3つがあって、すみには谷川が流れている。


家の持ち主との必要なやりとりがひと通りすんだ後、友人が「インターネットにこの家が取り憑かれていたと書いてあったけど本当ですか?」と尋ねた。えっ、そうなの?
「昔、家畜が次々と悪霊に殺されたけど、エクソシゼ(悪魔祓い)してもらったのでもう大丈夫です」と淡々と答えられた。

持ち主が去ってから各自が部屋を決めたりした後に、居間に置いてあるその家の歴史を収集したファイルを見ていた別の友人がまた新たな事実を発見した。第二次大戦中、その家にナチスの兵士たちが住み着いていたというものだ。ブルゴーニュ地方では珍しくはないらしいけど・・・。

滞在中、夜になると、誰かが覗いているような気がして窓の外を見ることができなかった。二日目の日曜の晩は満月で、谷間全体がくっきりと照らされているのがすごくきれいだったけど、月見の散策中もずっと背筋がぞくぞくしていた。

カメラの不調でこの時の旅行の写真がなく、今回は全て友人から借用したが、一枚目の写真をアップにすると右側の顔にぼやっとした影が映っている。写真には真実以上のものが映るというのは本当だろうか。