プティト・サンチュール


パリ市内の15区や19区、20区ではこのようなメトロの廃線をときどき目にする。
90年代に廃線となったプティト・サンチュール。現在は金網で囲まれて植物が生い茂っている。
見かけるたびに気になるが入り口が見当たらない。ある日、メニルモンタン地域のこの廃線にかかる歩道橋に座っていると、アラブ人の男性がレールの上を歩いてくるのが見えた。入り口を聞いてみると親切に教えてくれた。教えてもらった通りに鉄柵をよじ上って石柱から下地にジャンプし、中に入る。


90年代まで使われていたのが信じられないほど、緑に浸食されている。





右の地図で紫色のラインがプティト・サンチュール。

レールは左右どちらもトンネルに続いている。何となく北向きに向かう。日没時でトンネルの向こう側はほとんど見えず、かなり距離がありそうだ。歩き始めるとすぐに真っ暗闇に包まれる。携帯のディスプレイの明かりを頼りに歩く。天井から結露のしずくがぽたぽたと落ちてきて、地面のところどころに水たまりができている。

トンネルの真ん中辺りで暗闇の中から徐々に横たわる人の形が浮かび上がって来た。一瞬幽霊だと思ったが、トンネルの線路にうつぶせに寝ている黒人の若者だった。
ここから怖くなって早足で歩いて行くと、やっと出口にたどりついた。もう日は暮れていた。トンネルの脇の細くて急な坂をよじ上って、金網の穴をくぐりぬけ外に出るとブッテ・ショウモン公園のど真ん中だった。南に向かっていたら20区のFleche d'Orへ出ていたのかな?

プティト・サンチュールを再利用しようという案があるらしいが、このまま放置しておいてほしい。

パリの現役のメトロ駅で一番幽霊が出そうな駅は、メニルモンタンから目と鼻の先のクロンヌ駅(2番線)だと聞いた。1903年に火災が発生し、75人が犠牲になったらしい。今は何の変哲も特色もないありふれたメトロ駅になっている。