ダニエル・メンシェ、イタリアン・アール・ブリュットなど

パリは12月から3月初めぐらいまでは結構イベントがなくて、春になってくるといろいろおもしろいことが増えてくる。今、ちょうどそれが始まった季節。
金曜日のダニエル・メンシェのコンサートはめちゃくちゃ良かった。コンサートの前に少し話していたダニエルは、チワワと自然が好きな普通のアメリカ人おっさんという感じだったのに、ショーが始まるや否や、ステージからは底知れないエネルギー。彼はあまり海外にツアーに来ないのか、見たのは初めてだったが、パリジャンの観客もあまりのかっこよさに陶然だった。ここ数ヶ月見たものの中で、文句なしに一番いいコンサートだった。

土曜日は、日本人の女友達3人でサクレクール寺院の麓の公園で和食メインのピクニックをし、その後、そのすぐ脇のサン・ピエール・ホールへ展示を見に行った。アールブリュットを専門にしている私営美術館で、去年はじめて海外に出展された日本のアールブリュットがとても好評だったところ。今はイタリアのアールブリュット展をやっている。おもしろいものがいろいろあったが、特に印象に残ったものがいくつかあった。

ジョヴァンニ・ポデスタ氏の宗教細密画を施した家具類 ー イタリアでは最も有名なアールブリュットのアーティストの一人らしい。住んでいた地域の葬式には必ずかけつけてモラルの説教をするので、地域住民には変人として煙たがれていたらしい。

ロザリオ・ラトゥーカ ー シチリア島かどこか南の方のカヌー職人。大病で聴力を失ったかなんかで、悪夢に出てくる怪物のカヌー細工を制作した。

もう一人、メモを取らなかったので名前を忘れたが、貧しい家に生まれて毎日そうじをやらされていた人が雑巾を細く切り裂いて作った編み物風の服やバッグ、ブーツなども激しい異彩を放っていた。いっしょにいた友達は、それを見て、ローザンヌのアールブリュット美術館にある精神病のアーティストが病院のベッドのシーツを細かく引き裂いて作ったウェディング・ドレスを思い出したそうだ。

日本のアールブリュット展のときは、日本人らしい細部への偏執狂的なこだわりがとても印象深かったが、イタリア人の作品には芸術(とりわけ宗教芸術)と手工業の伝統が生きているのが特徴的でおもしろかった。

展示のリンク http://www.hallesaintpierre.org/category/exposition/en-cours/

日曜日は104へ。金曜日からずっとやっているエレクトロ音楽のフェスティバルにその日本人友人が出演するので見に行った。
104はまだ出来て数年で新しく、方向性もあまりしっかりしてなくて、なんかスペースだけがばかでかい施設という感じがする。音響も良くないし、レジデンスもないし、時々いい企画があるけど、たいていは残念なやつ。家の近くにある新しいコンサート会場、ゲテリリックもそんな感じ。あそこで見て良かったのは、灰野敬二のコンサートのみ。延々と演奏を続ける灰野さんを阻もうとするオーガナイザーを無視してさらに延々と続けていった灰野さんがかっこよかった(というか、灰野さんは演奏に夢中でオーガナイザーが仁王立ちしてるのを気付いてなかったらしい。さすがだ)。オーガナイザーが諦めて引き下がった瞬間に会場からは大きな拍手。やっぱり、みんなNYのハイソの出来の悪いコピーみたいなあの会場が嫌いみたいだ。
小さくて雰囲気もいい会場はどんどん消えて行ってる。2年ぐらい前にはよく使われていた13区の地下駐車場を改造したスペースや、バーシーの近くの倉庫のなかのトンネルなんかはすごく良かったのに。