日本とフランスの違い ①

ヨーロッパの文化は上から下、音楽にしろ劇にしろバレエにしろ絵画にしろファッションにしろ、どれもこれも王侯貴族の宮廷から発祥した。
日本の場合は、源平合戦とともに貴族の時代が終わって武士の時代に入り、下から上の文化が確立された。最終地点の江戸の文化は世界にもまれに見る町人文化で、江戸の識字率が、当時、世界でナンバーワンだったということからも、そのすごさが窺える。

中世フランスの宮廷にはトイレがなくて、ルーブル宮殿が大小便まみれになったのでベルサイユに引っ越し、ベルサイユもすぐに大小便まみれになった。フランスの王侯貴族って絶対にちょっと変。
最近、寺山修司の本で、ルイ14世の宮廷の賭博場の絵や、ルイ18世の変態行為を描いた風刺画を見つけたので、フランス人旦那に見せると、賭博の方は「暇つぶし」、変態行為の方は「文化の中心人物としてクールに見せようと奇を衒った」という意見だった。質素倹約を実行した日本の将軍とはえらい違いで、そのまま野放しにしておいたら碌なことにならなかっただろう。
映画カリギュラの描写も単なる誇張ではなかったのだなと思わされた。

(ルイ14世のロッテリー。王は中央上部のテーブルに座りひざまづいた従僕と向かい合っている。従僕は券の入ったバッグを持っている)

(ルイ18世)

カリギュラ予告編

多分、人間は金と権力を握ると心根が腐るし、何かものを創るにはガッツがいるので、専制君主には向いていない。だから、文化は江戸式に下から上がいいと思う。江戸文化に興味を持ったのは5年ほど前だが、私の中の江戸ブームはまだ続いていて、研究本を見つけるたびに欲しくなってしまう。松岡正剛がいうには、日本の出版社はいまなお大半の江戸文芸や江戸文書を刊行していないらしいので早く全部出して欲しい。
戦後、アメリカからポップカルチャーが起こったが、フランスはこれを芸術と認めなかった。今のフランス文化は、どこへ向かうか分からずに路頭に迷っている感じがする。
70年代頃のパリの話を聞くと、下町人情にあふれていて、とても暮らしやすくて楽しかったと言う人が多い。90年代ぐらいまでは良かったそうだ。通貨がユーロに変わったあたりからちょっと住みにくくなって、最近は物価が高いので若者はベルリンかブリュッセルに行ってしまい、パリはブルジョワの町になってつまらなくなった。フランスには江戸式な思考の導入が必要じゃないだろうか。
[rakuten:neowing-r:10178356:detail]

不思議図書館 (角川文庫)

不思議図書館 (角川文庫)