突拍子もない映画

映画と呼べるのかどうかは分からないが、すごく変なものを見た、というか、見させられた。それは、ある種のビザでフランスに移住した外国人のなかで高卒以下の人々が義務的に見させられるビデオレクチャーだった。私は高卒以下ではないけど、学位を証明する書類を持っていくのを忘れたため、それを見るはめになった。稀に見るすごいものだったから、結果的にラッキーだったのかも知れない。

それは、フランスの首都はパリです、という言及で始まり、フランスは民主主義で、大統領は五年に一度選挙で選ばれることを述べ、それからフランス革命の説明を始めた。
「自由、平等、博愛。・・自由。フランスではデモの自由があります」というおっさんのナレーション。「そして、平等」
映像がデモ群衆から女性のバス運転手に切り替わった。
「フランス国民は平等なので、女性でもバスの運転手になれるのです」
笑いそうになったが、ビザが取り消しになると困るので我慢した。
「博愛」というナレーションとともに、画面は何年前か知らないがフランスが進出したワールドカップ決勝のスタジアムへディゾルブしてゆく。顔にフランス国旗(トリコロール)をペイントした観客数万人のゆったりとしたパンショット。

「自由、平等、博愛」の公式定義がこんなに浅はかなものだったとは・・。

以下はナチスの宣伝相ゲッペルズの言葉。
「ターゲットの心理をよく調査し、必要なだけ繰り返せば、四角を円だと信じさせるのも不可能ではない。四角も円もただの言葉だ。そして言葉は、でっちあげの概念を装うように鋳型にはめることができる。」